貫き通した純愛7
あっぽとだーさんは、暇さえあれば連絡を取り合っていました。
三ヶ月と経たないうちにメールのやり取りだけでお互い500件以上。
つまり、送受信合わせたら1000件以上という計算です。
それに加えて、電話は短くても30分、長いと3時間以上も話していました。
お互い、本当に些細なことと、あっぽの周囲の重いことだけしか喋っていないのに。
やがて、あっぽは元々尊重していただーさんの言葉に深く影響されるようになっていきます。
何故なら、だーさんの境遇があっぽとよく似ていること、あっぽが少しでも気が楽になれるようなことを言葉を選んで伝えてくれること。
それは、あっぽにとっては何もかもが初めての経験でした。
一人で耐えることしか知らなかった。
親の言うとおりに生きることだけが道だと信じていた。
親の期待に応えられないのは、子どもとして失格だと思っていた。
そこに、あっぽ自身の意思や言葉は発生しなかった。
言葉で伝えても伝わらない周囲の人間。
意志を尊重されない生活。
そのうち、あっぽ自身は、深く考えることを諦めていた。
耐えれば良い、笑ってれば、言うとおりにしてれば、何も考えなければ。
孤独でも、辛いとは思わなかった。
でも、だーさんが、そんな考えが間違っていることを、周囲がおかしいことを、助けようとも気付こうともしない身内を、打開するすべを教えてくれたのです。
あっぽのかたくなだった心は徐々に和らいでいきました。
辛いことは辛いと言えるようになり、嫌なことは嫌といえるように、少しずつ。
でも、どうしても立ち向かえない相手、どれだけ言っても通じない相手がいたのです。
そう、祖母と母親、そしてGです。
祖母は、あっぽの趣味をしょっちゅう周囲に暴露していましたし、勝手に部屋に入り込んで勝手に模様替えをしたりする。
いくら言っても、全く聞く耳を持たない。
あっぽは、ある意味諦めました。
他の二人よりは、まだマシだったからです。
母親は、再婚寸前まではまだ話の分かる人間だったようですが、再婚してからは人間が変わったかのように金の話ばかり。
しかも、あっぽが受験しようとした学校すら一時期は認めようとしなかった。
県内ではトップ校と言われる学校に入れるだけの実力があったのに、そこを受験させようとはしなかった。
一回、認めたような話をしたかと思ったら、金を出すのはGなのだから認めるわけはないし、受験するなんて話聞いたことないとまで言い出す始末。
そのくせ、あなたの夢を最後まで応援しているのは私だから、とか、いざとなったら私が働いてお金を出すから、などと微妙に味方ぶった発言をする。
実際には、全くそんなことはなかったのですが。
再婚する段階で、働かないことが条件に盛り込まれていたそうですし、金を出す以上はGの言うとおりにするという契約があったのです。
なので、あっぽに対しGが行ったことも全て黙認、要は金で黙っていたわけです。
キチガイとしか言えません。
Gは言うまでもありませんね。
金に物を言わせて、あっぽやその妹達を好き勝手していた最低最悪の人間です。
経済的・身体的・心理的・性的虐待の全てを行っていたのですから。
性格は、だーさんいわく『これ以下がないほどの粘着質かつ最低な腐れ外道』と。
だーさんがここまで言うのは、正直初めてだったりします。
これが将来、あるグループ企業のトップに立とうというのですから、世襲制というのは恐ろしいものです。
このGと最終的に決着をつけたのは、一度は屈服しただーさんと、絆で持ち直したあっぽでした。
が、とにかくこの時期は、あっぽは絶対に会いたくない人として、会うことも話すことも避けていました。
そういった身内による攻撃を、それでも何とか防ぎながら、泣きながら、時には塾をこっそり休んでだーさんと逢引しながら、あっぽは生きていきました。